「25年目の贈りもの」展ギャラリートーク


Warning: Use of undefined constant user_level - assumed 'user_level' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/kudorollin/www/www.shinsuke.com/wp-content/plugins/ultimate_ga_1.6.0.php on line 524
常設展のチケット。
常設展のチケット。いつも年間観覧券で入っていたので、はじめて購入したような気がします。

福島県立美術館は、昨年度で開館 25 周年を迎えたそうです。それを機に新たに収蔵された 162 点の作品が現在、常設展に展示されています。この日はそれらの案内を学芸員さんが務めてくださる、ギャラリートークの日でした。

お話の中心は、新たに収蔵された、コロー、ルノワール、そしてミレーの作品についてでした。なぜ印象派が起こったか、そしてなぜ印象派が終わったか、という、19 世紀から 20 世紀にかけてのフランスの芸術界の事情がまた少しわかりました。他の作品についても色々な解説をいただいたのですが、作品を見ずにここで何を書いても仕方がありませんので、気になる方は次回のギャラリートーク(2010-05-16 14:00)にお出かけになってはいかがでしょうか。

ギャラリートークのはじめに、今回の予算は自民党政権時代に交付が決まったものだというお話がありました。ひょっとして、政権交代後に現政権が回収しようとしていた補正予算だったのではないかと思い、ギャラリートークの終了後に学芸員さんに伺ってみたところ、「そうです」とのこと。「(不安はありましたか?)ええ。しかし、すでに地方に回してある予算は回収しないと決まりましたので、購入できました」「(予算の額は?)3 億円です。県立博物館にも 3 億円が交付されました。」

美術館にたまたま居合わせた見ず知らずのお客さんから聞いた話では、福島県立美術館の予算は燃料代(確かディーゼルの自家発電ですよね?)で毎年ほぼ使い果たしてしまうのだとか。お金がないと言えば、お隣の福島県立図書館は来館者に配布しているプリントに「福島県立図書館は本当にお金がないんです。」と赤裸々に告白していたと思うのですが、学芸員さんによれば県立図書館にも 1 億円の予算が付いて、あちらは手狭になった書庫に電動書架の構築を行うのだそうです。本当によかった。

アンドリュー・ワイエス展「創造への道程」福島県立美術館


Warning: Use of undefined constant user_level - assumed 'user_level' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/kudorollin/www/www.shinsuke.com/wp-content/plugins/ultimate_ga_1.6.0.php on line 524
アンドリュー・ワイエス「創造への道程」チラシ。
アンドリュー・ワイエス「創造への道程」チラシ。このチラシの肖像は自画像かと思っていたのですが、実は違いました。

福島県立美術館に所蔵されている作品をすべて知っているわけではありませんが、僕が見てきた中でも特に良いと思えたのが斎藤清の版画作品とベン・シャーン、そしてアンドリュー・ワイエスの絵画作品でした。今回、福島県立美術館で、アンドリュー・ワイエスの展覧会が開かれるということでしたので、楽しみにしていました。

アメリカン・リアリズムというカテゴリーに分類されるこの画家は、緻密で具象的な絵画が特徴的です。「光と影の画家」といわれ、確かにその明るさの表現や、光線に対する観察眼の鋭さなどは目をみはるものがあります。一見写真のように見える絵画も多いのですが、近くによれば寄るほど、信じられないぐらい細やかな筆さばきのあとを見ることができます。

そんな画風なので、とにかく手抜きがありません。編みかごはきちんと一本一本のひもが描かれているし、家の外壁の板も一枚一枚正確に描かれています。肖像画に至っては、無精髭の一本一本まで描かれているような具合です。とにかく、他の画家ならとるに足らないものとして省いてしまうようなディティールを、とことん書き込んでいます。面白いのは、どうやらそうやっているうちに「とるに足らないもの」の方に愛情を注ぐようになってしまうらしいこと。自分の奥さんをモデルにして絵を描いていたはずが、いつの間にかその奥に描かれた自宅二階の窓が主人公になってしまったり、卵を計量する場面を描いているうちに卵の計量器自身が主人公にになってしまったりと、変わったものに愛が注がれている作品が目立ち、しかもそれがとってもかわいい。

絵画に関しての自分の無知ぶりをさらすようで恐縮ですが、習作の多さに驚かされました。一つの絵を完成させるにあたって、鉛筆書きの習作が 3~4 枚、水彩の習作が 1~2 枚、そして完成作品、という展示の流れが目立ちました。水彩が中心だから、ということも関係しているのでしょうけれども、これだけの画家でも、あれだけの秀作を重ねて作品を完成させるのだと知って、ちょっと安心しました。なんだ、僕が一曲を仕上げるために数十曲没にするのは、別におかしくないんじゃないか 😉 という具合に。

展覧会の最後に、インタビューが上映されていました。その中の画家の言葉に感銘を受けました。「想像力が刺激されたなら、すぐにでも行動しなければならない。」僕もそうありたいと思います 😉 。

画家は、この展覧会の開催中にお亡くなりになったそうです。今年 90 歳を迎えていた画家は、亡くなる寸前まで創作活動を続けていらっしゃったようです。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

大岩オスカール:夢みる世界


Warning: Use of undefined constant user_level - assumed 'user_level' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/kudorollin/www/www.shinsuke.com/wp-content/plugins/ultimate_ga_1.6.0.php on line 524
「大岩オスカール:夢みる世界」のリーフレット
「大岩オスカール:夢みる世界」のリーフレット

福島県立美術館で開催されている企画展、『大岩オスカール:夢見る世界』に行ってきました。大岩オスカールさんは 1965 年生まれのブラジル移民 2 世で、1991 年からは日本に、2001 年からはニューヨークに暮らしている、現役の美術家です。

展示室に入ると、十数メートルはあろう巨大なクジラの骨と、潜水艦の作品からはじまりました。やっぱり現代の美術家というのは、いい意味で型にはまっていなくて、ドキドキします。タイトルはどちらも『クジラ』。ただものではないな、と思わさせられます。

全体的に小さな作品はほとんどなく、タテ・ヨコ 2 メートルを超えるような大きな作品がほとんど。これを北千住の、ご本人いわく「6 畳ない」部屋でよくぞ描いたものだとまずは感心してしまいます。これだけ大きなキャンバスの中に、携帯電話ぐらいのサイズの遊び心あふれるモノがたくさんちりばめられていたりして、私のような素人には宝探しをするような感覚で絵を楽しむこともできました。

絵の表現方法として、人工の構造物の崩壊という題材が目立ちました。本質的な題材は例えば温暖化だったり、現代社会に対する批判とか揶揄とかいったものなのだと思いますが、そういった人類の築きあげたものを鉄骨などの構造物にたとえて描き、それが派手に破壊されるのではなく、自重に耐えきれなくなって無残に崩壊するとか、ゆがんでゆくとか。そういう表現が目立ちました。

僕にとって何よりも印象的だったのは、ちょっと失礼かもしれないけれども、実は休憩室で上映されていたご本人のインタビュー。現代の美術家を「水をたっぷり入れて薄めたスープ」のような作品を作ってしまいがち、と評価していました。ちょっと辛辣。

「自分の仕事は、地味なことをコツコツやりつづけることだけ」というような事をおっしゃっていたことには感銘を受けました。僕の音楽が今後どうなっていくかわかりませんが、僕も自分にできることを今後もコツコツと積み上げていこう、と決心を新たにしました。

展示は 9 月 28 日(日曜日)まで開催されています。

福島県立美術館「風刺の巨匠 ドーミエ版画展」


Warning: Use of undefined constant user_level - assumed 'user_level' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/kudorollin/www/www.shinsuke.com/wp-content/plugins/ultimate_ga_1.6.0.php on line 524

福島県立美術館に行ってきました。今回の企画展はフランスの画家、オノレ・ドーミエ(Honoré-Victorin Daumier、1808~1879)の版画展でした。ドーミエはナポレオンによるフランス第一帝政に生まれ、ブルボン家の復古王政下に育ち、七月王政、第二共和政、第二帝政を体験し、第三共和政下で没しました。彼は人生のほとんどの期間、収入を得るために出版物の挿絵用の版画を描き続けました。版画はほとんどが新聞に掲載された風刺画だったので、今回の展覧会もいきおい「新聞の切り抜き展」となっていました。

2008030206.jpg

ドーミエの写真、ナダール撮影、wikipedia より

ドーミエの版画を支えているのは、やはりすぐれた人物描写であると思います。人々の特徴や表情がどれも素晴らしく、40 年程度の間に 5,000 点という制作ペースでよくぞこれほどまでの作品を制作できたものだと感心してしまいます。しかしながら、今回の展示物は美術品を鑑賞する楽しみよりも、同時代のフランス新聞を味わう楽しみ、つまり純粋に風刺を楽しむ気分の方が僕にとっては強い展覧会でした。もともと読む人を楽しませる風刺画であるわけですし、目の前に置いてあったのがキャンバス等ではない、まぎれもなく新聞紙そのものであった点も影響していたのかもしれません。そういうわけでしたから、会場でこらえ切れず噴き出してしまった事も 2 度や 3 度ではありませんでした。

2008030201.jpg

「当世代議士鑑 立法議会 17 ド・サン=プリエスト」 (パンフレットよりスキャン)

たとえばこちら。 代議士の風刺だそうです。確か会場の解説によれば、この風刺画の下の解説文の訳は「郵便改革に着手した彼は、青メガネのかけ方の改革にも着手している」だったかな。この絵の裏側に別の新聞記事がうっすらと映っており、新聞の切り抜きであることがわかります。

2008030202.jpg

「パリに新しく開店したイギリスレストラン(今日の風刺画 86)」(パンフレットよりスキャン)

個人的にこれも好きでした。確か下の文の訳は「なんてお得なお店なんだ!たったの 2 フランと 25 シリングでビール一本にアオウミガメのスープ、ローストビーフとポテトの添え物、そしてもれなく下痢まで付いてくるなんて!」だったかな。右側のテーブルの男性客の、何ともいえない不味そうな表情がたまりません。この解像度ではよくわからないと思いますので、ぜひ会場で御覧下さい。

笑ってばかりいられない風刺もありました。例えばこちら。

2008030203.jpg

「善きブルジョアたち 54」(パンフレットよりスキャン)

確か解説は、「休日に気分転換のため妻をカフェに連れ出したブルジョアジー」だったかと思いますが、 完全に奥さんそっちのけで、普段通りに新聞を読み、自分の世界に没頭してます。こんな光景、現代日本にもよくあるんじゃないでしょうか。

そして極め付けがこちら。

2008030204.jpg

「Un Héros De Juillet」(Le Monde のこちらのページよりコピー )

これはパンフレットに載っていなかったので、インターネットから探し出して掲載させていただきました。タイトル訳はおそらく「七月革命の英雄」。剣を手に持った義足の英雄が、右手に三色旗のあがった七月王政の政庁を見ながら、入水自殺を図ろうとしています。全身の張り紙は「Monte de Piete」と書いてあります。フランス語で質屋の意味だそうで、その証書なのでしょう。首にくくったロープの先には重りがあり、それには「最後の手段」と書かれています。戦争の悲劇、七月王政への失望、生活苦と社会不安を一枚の背姿に巧みに描ききった傑作と思います。

2008030205.jpg

おまけ。ドーミエは主に『シャリヴァリ』という新聞に風刺画を寄稿していましたが、その創刊者は数多くの画家を自分の新聞の風刺画家として抜擢しました。その人物がシャルル・フィリッポンという人で、ドーミエ自身も彼に抜擢されて風刺画家となりました。この像はドーミエが作ったフィリッポンの像だそうです。今回の展覧会でも写真が掲載されていました。この表情大好きです(笑)。像には(ドーミエ以外の人物の手で)人物寸評が彫られているようですが、この像には確か「新聞記者、あるいは歯のない口で笑う奴」と書かれている、と書いてあったかと思います。それがまた見事な寸評。

最後に…ドーミエは「おのれ・ドーミエ」です。「俺の・ドーミエ」じゃないです。間違えてるページを何件か見つけました。